最近、首藤剛志の小説『永遠のフィレーナ』を読んでいて、ふと思った。
ラヴォスの正体とは人類だったのではないだろうか、と。
『クロノトリガー』をプレイしたのは僕が小学生になった頃だったので、もうかなり前だ。この前30周年記念だった気がする。
それもあってか、とっくに忘れていたはずのゲームの事を、小説を読みながら思い出した。
ラヴォスとはクロノトリガーのラスボスのことであり、ネットで調べると遥か太古の時代に宇宙から飛来し、地中の奥深くでその星の様々な生き物の遺伝子を学びながら栄養を得て、1999年に世界を滅ぼし、その後の未来で子を産み、その子たちが再び宇宙へ飛び去っていく、と書いてあった。
ラヴォスとは宇宙から飛来して星に寄生する生物だという。
それで、なぜその正体が人類なのかというと、これは公式設定に基づかないので考察というより想像なんだけど
僕らがただより良く生きるために行っている文明生活の営みを地球の側から眺めれば、地球に寄生してその環境を壊している側面があり、それがラヴォス的な行為に思えたからだ。
僕が読んでいた『フィレーナ』も、人類が環境を破壊して生き物が棲めなくなった場所が多くなった世界であり、人類を支配する帝国の人たちは人為的に遺伝子を操作して次世代を急速に進化させていくものの、逆に汚染された環境に適さなくなり、また限られた土地に対して増えすぎた人口も減らさなくては飢える、というかなり過酷な世界が舞台だった。
これは80年代~90年代に出版された物語だけど、今読んでもその世界で描かれたいくつかは現実の未来で起っても不思議ではないと思わされる。いや、既に人の住めなくなった場所はその当時の時点でもいくつか存在していた。
現在でも原発事故により通常の居住が認められない区域が広範囲に残っている場所がある。また有害物質で汚染された環境は半永久的に悪影響を及ぼしかねない。戦争による被害も深刻で、ベトナム戦争時に散布された枯葉剤や湾岸戦争などで使用された劣化ウラン弾などにより多くの人が今も後遺症で苦しんでいる。ルワンダでは地元ラジオで敵意を煽られたことで一般民衆が大虐殺に加担してしまった。近年では有害物質が付随するプラスチックゴミが海に流れ、膨大な量が蓄積されている。これらは海の生き物を食べる人間に全て返ってくるため、健康リスクが懸念される。そして地球温暖化についてはIPCCの報告書において人間活動によるものと既に断定されている。これらはほんの一例にすぎない。
また、その小説の世界では、過去数百年前にその星の代わりとなる新天地を目指した研究が人工の月で行われるも、宇宙空間における人体への悪影響などから計画は失敗していた。
現実のこちらでも宇宙飛行士たちの努力の成果もあって宇宙空間が人体にかなりの負担を強いることが判明している。そしてアポロ計画から半世紀、人類は再び有人月面着陸を目指している。イーロン・マスクは火星への移住も計画しているようだ。だが映画『インターステラー』を観ると星間移動の技術が仮に出来ても新天地を目指すのはかなり大変なことだと思わされる。ある水の星に数時間滞在しただけで、地球では23年以上経っていた。
宇宙に進出するのは人類にはかなり厳しい。しかし、いずれ地球はこのままいけば小説や映画のようにどこにも住むことが出来ない環境になる。改善が不可能なまでに至った場合は新天地を目指すしかない。人類には難しくても宇宙空間に耐えられる虫はいるため、宇宙に最初に遠くまで進出するのは虫だと言う人もいる。
僕は想像する。インターステラーでは地球に住めなくなる前に人々は地球外へ移住することが出来た。だが移住できなかった場合はどうなるか。人類は滅亡する。しかし人間の作ったコンピュータ、AIはどうか。
鳥山明の『ドラゴンボール』では、人造人間セルの製造を、開発者であるドクターゲロが亡くなった後もコンピュータが引き継いでいた。では、人類滅亡後も宇宙に進出するというヒトの目的をAIが拡張させて研究を続けた場合はどうなるか。ドラゴンボールでは地球人、サイヤ人、ナメック星人、フリーザたちの遺伝子を統合してセルを作っていた。同様に、宇宙空間に耐えられる様々な遺伝子を参考に新たな生物を作り出したとしたら。それがラヴォスなのではないか?ラヴォスが宇宙空間を飛ぶことが出来るのも、様々な遺伝子を学ぶ能力があるのも、もともとそのように作られた生物だったのではないか?
つまり、新天地に移住するという人類の夢の残滓がラヴォスなのだ。こうした想像はフィクションに過ぎないが、僕ら人類が仮に宇宙へ進出することが可能になったとしても、やることはラヴォスと変わらない。新たな星に寄生してその星を悪意なしで壊し始めるだろう。ただ生存し増殖するために。
ラヴォスの第一形態、外殻はウニや虫のような棘に覆われている。その内部の第二形態はドラゴンボールのセルのような姿をしていて人工的な生物を思わせる。そして最終形態は宇宙服を着た人間のような姿。
実は「宇宙服を着た人間」というのは僕が勝手にそう思っているだけである。プレイヤーの中には様々な解釈があるに違いない。ここではあくまで僕の思い込みを前提にしている。モンスターグラフィックを担当した人がラヴォス最終形態の姿について何か語ってくれていたらいいのだけど、公式の場においては、おそらく語られたことはないと思われる。ネットで調べたくらいだが、担当者が最終形態の姿についてインタビューなどで語っている、というのは見当たらなかった。
ただ、僕は忘れていたけどキャラクターの台詞を確認すると、最終形態を見たマールが「人間の形」とはっきり言っていた。最終形態が「人間の形」である理由は、ラヴォスがその星の遺伝子を学び、その星の支配者が人間であることを学んだためか、あるいは自分を追い詰めるクロノたち人間を脅威と思って「進化」したためなのか。
ロボは、ラヴォスの目的とは全ての生物の遺伝子、記録を得て進化すること、と述べていた。ここでの進化とはラヴォスという個体のみに言っているため生物学で言う進化のことではないのだろう。ラヴォスの目的の結果、最終形態が人間だったとしても、これは僕の印象でしかないが「人間の形」をしていても人間性があるようには見えない、何かロボット的にも見える。もっと人間らしい姿でもよかったはず。しかしどこかモンスター的な見た目になっている。そしてやはり「宇宙服を着た人間」のように見えてしまう。クロノトリガーの星が壊されたのは1999年であるため、ラヴォスが学んだ最終的な人類の姿がその時代の人類であるなら、もしかしたらその時代の人類もこちらの世界の人類のように宇宙への進出を目指していたのかもしれない。そうした人類を見てラヴォスの最終形態があのようになった、というのもあり得るだろうか。
ただ、ラヴォスは「進化」する前から、既に星間移動をする能力を持っていた、というのもやはり気になってしまう。どのようにしてこうした能力を得たのか。もともとそうした存在なのだ、でも良い。ラヴクラフトが創造したような宇宙的な恐怖を現した存在がラヴォスなのだ、と。
しかし最初に僕が想像したように、新天地に移住するという人類の夢がラヴォスの目的にあり、それがクロノたちの星の全ての生き物の遺伝子を学ぶ前から既にあった、ということが最終決戦で露呈した、という見方も可能ではないか?
そして、もしこれまでのそうした想像が許されるなら、こうした構図としてこのゲームを見ることも可能かもしれない。すなわち
このゲームは
クロノたち人間 VS 地球外生物
ではなく
クロノたち人間 VS 僕ら人間
の物語であり、さらにメタ的に見るなら
クロノというキャラを操作する僕ら VS キャラから離れて暮らす僕ら
という、ゲーム内の僕らとゲーム外の僕らの対立構造になっている。ゲームをしている時の僕らは星の危機に真剣に立ち向かう。しかし、一度ゲームを止めた後、僕らは星について考えを巡らしたりするだろうか?おそらく資本主義社会の中で暮らす生活にただ戻るだけだろう。その果てが破滅だという予感をたとえ心のどこかで抱いていたとしても。
つまり、星を滅ぼそうとするのも救おうとするのも僕らの両面であり、ゲームから離れた後、そのどちらに進むのか?はかなりの難題ではあるものの、それを決断できるのはやはり今を生きる僕らの世代でしかないと思うのだ。僕らは良くやった、後は次の世代に任せる。そうやって問題の先送りを繰り返した結果が今の状況だ。だが僕らがそれを行った場合、次世代に選択の可能性が残されている保証はない。今が人類の最後の決断の時なのだ、という人々の無意識がラヴォスとの宇宙的な戦いとして反映されていたのがクロノトリガーだったのだ。



コメント