【王様ランキング】「弱者」についてのべビンの返答が素晴らしい

アニメ・漫画など

『王様ランキング』という作品をご存知でしょうか。オレはこの前観ました。いや、これ最高じゃないですか?


ボッジ王子という子どもとその親友で目玉が特徴的な異形の生物カゲと一緒に世界一立派な王様になることを目指す作品です。


それだけなら、まあ珍しくはないように思えます。しかしボッジは生まれたときから耳が聞こえず、喋ることが出来ず、おまけに腕力が全くないといったハンデを持ってました。そのためボッジの義母のヒリング王妃や家臣たちの多くは次期の国王はボッジの義弟のダイダ王子にしようと考えていたほどです。


でも何やかんやで彼は地底にある冥府で修行をして最強になります。そしてその力は彼が普段短所だと思っていたものが長所として活用されたものだったので、非常に独自性があり、こういう視点はなかなか珍しいものだと思いました。


まあ、その、なんですか、つまり


いいんですよこれが


最強になったと言ってもそれでサクサク話が解決していくわけでなく、恨みや怒り、悲しみなどを抱えて時には何度か逃げ出そうとしています。それでも前に進もうとするボッジにこちらも勇気づけられます。


弱さをいっぱい持つキャラクターなのに、とても健気で素直で直向きなキャラクターでもあるんです。無垢で純真とも言えますか。


彼の周りのキャラクターも様々な思いを持って行動していて、単純な勧善懲悪になっていないところに作者の人間に対する考え方が表れているように思います。


そしてアニメから見始めてやはり思うのは、音楽と背景美術の調和、美しさ楽しさ、声があることでキャラクターに命が吹き込まれ、ボッジやカゲの表情や行動が丁寧に描かれることでその心情が観る人に手に取るようにわかるようになっているところです。アニメは素晴らしい。


そんな王様ランキングで今回話したいと思ったのが、ダイダ王子に仕えるべビンの台詞。

アニメ11話「兄と弟」べビンの返し


ダイダ王子は、幼少期はボッジを慕っていながらも、成長して強くなるにつれ、何もできないボッジをいつしか弱者として見下すようになっていました。


そしてダイダに剣術を指南するべビンに、ダイダが「兄上は弱者だからとどこか甘えていないか?」と尋ねたことをきっかけに、べビンはダイダに街へ行くことを提案します。


街に行って目に映るのは、小さな子ども、病人、老人といったダイダから見れば弱者に映る人たちです。ダイダがなぜ街に連れてこられたか測りかねている時に、べビンがボッジ以上にハンデを持っている男を見つけます。その男は耳だけでなく目も見えないため、ダイダは困惑しながらもそうした存在がいるのは不公平だとし、「オレだったら即自ら命を絶つ!」と言います。


対してべビンが言った言葉がこれです。


「それは同じ境遇ならば生きていく自信がないということですか?」
「ならば彼はそれを乗り越え今を生きている強者ですな」



いや、素晴らしくないですか?


その理由の一つには、べビンは多くのハンデを持った男が一人の人間として如何に立派に生きているかを、何の気負いもなく当たり前のように言っているところにあります。もう一つは、ダイダを突き放してはいないところです。べビンが街に行くことを提案してこの台詞を言ったことも、ダイダには「皆に希望を与える王様になっていただきたい」ためでした。


彼はダイダに「差別はいけない」とは言っていません。それは結局差別する者と同様に対象を弱者と見ていることになりかねないためです。差別の克服の一つの在り方としてべビンの他者を尊重する態度は参考に出来るものがあります。


また、ダイダがボッジを弱者と見るようになった理由も、それまでの描写から読者にはわかるようになっています。ヒリングから何も出来ないボッジを助けてあげなさいと言われたことや、立派な王になるために日々鍛錬して努力を欠かさないこと、鏡の言うことを聞いて物事が上手くいくようになったことなどの全てが彼のプライドが高くなった要素になり、そこから自分が汗を流している時にボッジがそうしていないところを見て、ボッジは楽して甘えているという風に見るようになったことも自然であるように思えます。そこにランキング制度、つまり競争社会における実力主義の弊害があるのでしょう。「強者」も「弱者」も常に不安の状態にさらされ、「強者」は「弱者」を見下すことでそれを誤魔化し、「弱者」はただ苦しむというような傾向。べビンの台詞はそうした価値観を逆手に取ったアイロニーであり、そうしたものが固定しきった価値基準に疑問を呈する、あるいは評価し直すことにつながるのではないでしょうか。思えば『王様ランキング』という作品自体がそうした姿勢なのかもしれません。


周りが「弱者」と見るボッジを親友のカゲや師匠のデスパーは一人の人間として尊重しています。ヒリングや周りの人たちはボッジを大事に思いながらもどこかでボッジを「弱者」と見ていたために知らずにボッジを傷つけていました。競争や実力主義自体が悪なのではなく、何事も過ぎたるは及ばざるが如しのため、行き過ぎたそれらを緩和し補完する意味合いで、そういうこの作品の姿勢が多くの人の琴線に触れた理由であるように思いました。



まあ、こんな感想はどーでもよくて、ファンタジー作品として純粋に楽しいので、いいんだこれが

何回いうねん

あと関係ないけど今年のオレ的アニメランキング第一位は『無職転生』か『サマータイムレンダ』か『進撃の巨人』で迷ってたけど今年も終わりになってまた考え直す必要のある作品に出会えて嬉しい

どーでもいいな


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